看護師をやっていると回ってくる、学生の実習指導。
看護実習学生指導は、学生さんが新たな気付きや学びを得られたときに、指導者も達成感を味わうことが出来ます。
また、学生さんからの純粋な質問や意見によって、普段忙しさで忘れがちな大事なことに気づかされたり、学びにもなります。
でも、うまく指導できない…
自分の業務が忙しくて、ちゃんと向き合ってあげられなかった…
そんな悩みも尽きないのが学生指導ですよね。
この記事では12年の看護師経験を持ち、4年目からずっと臨床指導者を経験してきた「Yuki」が、よくある悩みや学生さんとの関わり方のコツをお伝えしていきますね。
看護学生実習指導のメリット
学生の時にお世話になった臨床指導者。
看護学生の実習にはなぜ、臨床指導者が必要なのでしょうか?
臨床指導者側のメリット
- 自らの知識や技術を人に伝えることで、更に理解を深めることが出来る
- 相手の立場に立って考える訓練になる
- 日々の仕事の中では見えてこなかった患者さんの問題点を発見できることもある
学生側のメリット
- 現場で実際に働く看護師から生きた知識、技術を学ぶことが出来る
- 看護師モデルの理想を描くことが出来る
- 就職してからのイメージをつけることができる
学生指導は学生だけのためではなく、指導者側も成長できるチャンスと捉えてみましょう。
看護学生指導のデメリット
指導者、看護学生双方にメリットのある臨床指導のシステムですが、デメリットも存在します。
臨床指導者側のデメリット
- 仕事が増える
- 受け持ち患者を見ながら学生指導をするときは、時間調整が大変
- 学生指導がうまくいかないと悩む
学生側のデメリット
- 教員と指導者の意見が違ったときに戸惑う
- 教員と指導者両方に報告や相談をしなくてはならない
- 指導者側のスキルによって、受けられる指導の質にムラがでる
一番よく聞く悩みが指導者は最終的に出てきた実習記録を読むのが大変だし、学生は指導者さんと先生の言っていることが違うと混乱してしまう…といったことですね。
最近の学生さんの傾向とは?
厚生労働省が出している「平成25年版厚生労働白書若者の現状と課題」によると、最近の若者は仕事に対し、経済的豊かさよりも楽しく生活することを重視する傾向にあります。
結婚や出産に対しても当たり前ではなく、個人の自由と考えているようです。
また、これからどんどん高齢者が増加していくなかで、自分たちの将来を危惧する考えも高まってきているのだそうです。
最近では「ゆとり世代」から「さとり世代」なんて言い方もされてきて、また一昔前の傾向とは変わってきているところがあります。
このさとり世代には、いくつかの特徴がみられます。
- 欲がない
- やれることしかやらない
- 休日は自宅で過ごしたい
- 生まれたときからネット社会
- 恋愛は苦手などなど…
確かに看護師になりたいという理由にも、変化が見られるような気がしています。
今までは家族が看護師だったり、お世話になった看護師がいて、人に憧れて看護師を目指す人が多かったのが、今は安定を求めて看護師を選ぶ人が多いです。
私もそうでしたし、それがいけないというわけではありません。
ただ、自分で決めたわけではなく、親に‘看護師は安定した職業だから‘と勧められてきた人が多いんです。
自分で決めた将来でないと辛いことがあったとき、すぐにくじけてしまうのではないかと思うんです。
自分で決められない人が多いのも事実ですが、そういう人に新たな動機づけ、自分で決めた動機づけをさせてあげられたらいいなぁと思います。
看護実習指導者が陥りやすい悩みとは?
代表的な悩みをいくつか挙げてみましょう。
上手く指導が出来ない
指導をしても記録が書けない、行動できない、指導した事と違う事を学生さんがやってしまう…など自分の指導力に対する悩みは、臨床指導者の多くが抱える悩みだと思います。
それに加え、自分たちが学生だった頃の指導方法と現代の若者にあった指導の仕方の違いに違和感を覚え、うまく取り入れられないこともありますよね。
例えば、自分が学生の頃はよく「明日までにこれについて調べてきてね、考えてきてね」と当たり前のように課題を出されていましたが、今は一緒に調べてあげる姿勢を持つことが重要とされています。
こうした指導方法の変化にうまくなじめず、自分が教わってきたのと同じように教えようとしてしまい、うまくいかなくなることもあります。
昔はこう、今はこうというよりはもともと指導方法にはいろんな方法があって、人それぞれ合う、合わないがあるということは念頭に置いておく必要があります。
そんなに指導方法の引き出しなんて持ち合わせてないよ…と不安に思われるかもしれませんが、私も最初は手探りでした。
いろんなタイプの学生さんと出会うことによって、経験から指導方法を身につけることも出来ますし、外部研修で指導方法を学ぶというのも一つの手段です。
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学生さんとの人間関係
ちょっと厳しめに指摘したら、具合が悪いと早退されてしまったり、翌日から来なくなったり、もしくはそうなるのが怖いから、学生に対してどう接したらいいのかわからない…
こんな風に、学生さんとの距離感に悩む人も多いのではないでしょうか?
でも、あまり今の学生さんの特徴という一般論に振り回されない方がいいかもしれません。
それよりも個々の特徴をつかむようにして、いいところを見つけて褒めて、その上で良くないところは指摘するという風にした方がいいでしょう。
ちゃんと間違ったところは正さないと、とんでもない看護師が出来上がりかねないですから、正しい指摘はしていくべきです。
言い方やタイミングを考えれば、きっと正しい効果を発揮しますよ。
時間を確保できない
学生担当は専任で、患者の受け持ちはしないような指導体制が整っているところもありますが、中には通常業務と掛け持ちで指導を行っている病院もあるでしょう。
通常業務との兼務であると、学生さんをしっかり指導する時間が取れず「ちょっと待っててね」と待たせてしまう事もしばしば。
気が付いたら実習時間が残りわずかで、明日の相談もままならず…。
専任だとしても1人で6人の学生さんを指導しようと思ったら、行動計画を聞いて指導するだけでも半日かかってしまいます。
指導時間の確保は重要な課題です。
1人で全部指導しようとは思わず、学校の先生にお願いしたり、1部分だけスタッフにお願いすることもありなんじゃないでしょうか。
実習はやはり、行動して学ぶ場なので行動するチャンスはどんどん与えていくべきだと思います。
それを指導者待ちの時間で潰してしまうのはもったいないです。
かといって自分1人では出来る限界というのがありますから、周りの人にも協力してもらいましょう。
実習指導者としての関わり方のコツとは?
指導の仕方や関わり方など悩みは尽きませんが、実習で一番大切なのは学生の学びです。
学生が何かしらの学びを得られれば、いい実習だったと思ってもらえますし、学生にとってのいい指導者とは、何かしらの学びを与えてくれる指導者です。
学生が伸びるかどうかはどんな学びが得られるかにかかっています。
では学生が学びを得られるようにするためには、どのようにしたらいいのでしょう?
名前で呼んであげて
まず簡単なことから。
「学生さーん」という呼びかけから「○○さん」とちゃんとその学生さんの名前を覚えて呼んであげる。
簡単だけど効果絶大です。認められた感が得られるんですね。
私は意識して一生懸命名前を覚えるようにしています。
朝名前を聞いたら必ずメモって、呼ぶときには必ず名前を呼ぶ。
これだけで学生さんたちの表情は変わります。
楽しさを追求する
なんたって仕事にも経済面より楽しさを求めてくる時代ですから、実習だって楽しくしてあげなくちゃ。
何より、辛いとか怖いとかそういう気持ちで実習していても、緊張感だけで思考力はどんどんなくなっていくばかりです。
学生さんたちを緊張状態においても、いいことは何もありません。
いかにリラックスさせるか。そのほうが彼らの能力を発揮させることが出来ます。
私は学生さんたちの緊張をほぐすために、時には実習とは関係ない話をしてみたり、他のスタッフなんかも巻き込んで、日常会話を挟むようにしたりしています。
受け持ち患者さんの状況に合わせたケアの方法を追求するために、病棟の洗髪台で実習仲間同士で髪の毛を洗う練習をして、いろんな方法を試してみるとかね。
自分の実体験を話す
学生さんたちは体験談が大好きです。
自分が学生だった頃の失敗談や新人の頃の話、患者さんやご家族との関わりで苦労した話など、なんでも実体験の話になると食いつきが半端ないです。
それは、そこでしか聞けない話だからです。
学生さんたちは教科書には載ってない、生きた情報を求めています。
あなたにも自分の体験談なら、いくらでも話せることがあるのではないでしょうか。
学生指導には資格がいるの?
特に学生指導に特別な資格がいるということはありません。
ただ、病院によって5年目以上など経験年数に区切りを設けているところはあるかもしれません。
厚生労働省の「保健師助産師看護師実習指導者講習会実施要綱」に基づき、各都道府県の看護協会や看護大学や病院単位で実習指導者講習会というものが開催されています。
これは、概ね3ヶ月から半年かけて実習指導にまつわるノウハウや指導方法について学ぶことが出来る研修です。
3ヶ月まとめてずっと通い続けるパターンや、週末だけ開催して期間が長いものまでカリキュラムの構成は様々です。
費用も無料のものから有料のものまで、それぞれのようです。
もし、自施設で研修に出してくれる支援があるのなら、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
私も参加しましたが単なる教育論だけでなく、心理学なども学べてとても幅広い知識を付けることが出来ました。
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学生指導に入る前にできる準備
初めて学生指導をするときって緊張するし、不安ですよね。
自分が指導していることが正しいのだろうか?伝え方は間違ってないだろうか?
今年から始めて学生指導に携わるんだけど、その前に何かできることはないだろうか…?
そんなふうに悩んでいる人も多いと思います。
安心してください。ありますよ!
先輩から学ぼう
まずは同じ病棟で既に学生指導に携わっている人から、指導するときのコツなんかの話を聞いたりするといいかもしれません。
学生さんと接するときに気を付けていることとか、指導のポイントとか。
時間配分のコツなんかも大切だし、カンファレンスでは指導者はどうしたらいいのかなども聞いておくといいと思います。
実習の目的を理解しよう
各学校が作っている実習指導要綱に目を通すのも必要です。
今度来る学生さんたちの実習目的は何なのか、何を学びに来ているのかは把握しておきましょう。
それによって、何に重点を置いて指導をするべきなのかが変わってきます。
一番大事なのは意気込みすぎないこと
初めて実習指導をするときって張り切り過ぎて、あれもこれも詰め込み指導をしてしまいがちです。
事前準備もできることは全部やって、完璧な指導をしたいという気持ちも分かりますが、相手のレベルも考えて指導をすることが重要です。
そのためにも、実習に来る前からガチガチに準備して意気込むのではなく、自分もリラックスして実習生を迎えてあげるのが一番です。
看護学生実習指導のこれを教えて!Q&A
学生さんに出した宿題をやってこなかった!どうしたらいい?
これは指導者やってたら、絶対に経験することでしょうね。
まずはなぜできなかったのか、事実確認は必要です。
その時に大切なことは、相手を責めるような聞き方にならないようにすること。
やむを得ない事情があったり、実習に対してやる気が見られる場合には今できることを提示してあげましょう。
例えば、今日やりたかった清拭のプランを考えてこなかったのであれば、午前中の間に病棟にある文献を使って調べるように指示して、午後から清拭をやる予定にするとか。
調べ方が分からないようであれば、一緒に調べてあげることが必要かもしれません。
調べ方を教えてあげたり、一緒にやってあげることで、一度消えかけたやる気スイッチをまた入れてあげられることもあります。
ですが、その後で学校の先生にはその事実を報告しておいた方がいいと思います。
その学生さんの学習レベルを正確に把握してもらうために。
「事前課題をやってこなかったので、今日はやらせません」だといつまでも何もできないまま、実習が終わってしまいます。
それでは学びになりません。
かと言って、何も勉強してない人にそのままやらせても、ただやっただけで学びが半分以下になってしまいます。
なので、出来る範囲の代替案を考えてあげましょう。
調べたことが実施に役立つと分かれば、次からはきっと積極的に学習してくるはずです。
自分より年上の学生さんにはどう接したらいい?
最近は、社会人経験を経て看護学校に入りなおす人も増えているので、この問題には頭を悩ます指導者さんも多くいらっしゃいますよね。
人生の先輩としての敬意は忘れず、あとは他の学生と同じように接すればいいのではないでしょうか。
わたしは常に敬語で会話するようにすることは意識しますが、それ以外は基本何も変えていません。
ただし、完全否定することは極力避けた方がいいと思います。
「こうするよりはこうゆう理由でこうした方がいいです」という言い方をします。
ここで重要なのが、必ず根拠を伝えることです。
根拠があれば、大人は意見を受け入れやすくなります。
年下の意見を受け入れるためには理由が欲しいんですよ。だからその理由を提示すれば案外スムーズにいきます。
今までで一番困ったことは?
マンツーマンで、指導を3日連続でやっても全く進歩がなかったときは、頭を抱えましたね。
退院指導をしなければならなかったんですが、その必要性も内容も全て答えを教えても出来ませんでした。
記録にも書けない、言葉でも伝えられない、もちろん患者さんにも説明できない。
一緒にプランを考えて、その場で書かせたはずの紙も翌日にはなくしたり(笑)
ギャグかと思いましたよ。3日も進歩がなかったのでその間に患者さんの状況はすっかり変わってしまうし。
何をどんなに指導しても響かないこともあります。
自分のやり方が間違っていたのかなと振り返ることは大切ですが、必要以上に落ち込む必要はないと思います。
相手にもよりますから。
看護学生実習指導は大変だけど、やりがいもたっぷり!ぜひ挑戦してみて!
学生指導は面倒な仕事が増えるだけと嫌煙されることもありますが、やりがいのある仕事でもあります。
自分が指導した学生が、新人看護師として自分の部署に就職してきてくれたりするととてもうれしいものですよ。
学生さんとの関わり方には頭を悩ませることも多いと思いますが、それを通して自分も成長できると思うので、これからも実習指導を楽しんでいきましょう。
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